140粒の色

雪なのか雨なのか?得体の知れないスランプがどんよりとした空から降り注いでまして、文字を読む気にはなるけれど書く気にはなれないんですわ。
まっ、書く必要性などない身の上なんで全く困ってはいないのですが、常日頃から無意味で不気味な文字列を並べ立てては自己満足を得る儀式を崇拝する宗教の信者なもので、下らないエロ思想や歪んだ恋愛観が頭の中を蝿のように飛び回ってしまうんです。
えっと、、、どなたか天上から吊るす、あのクルクルのネバネバした蝿取り紙を取り扱っているお店をご存知ではありませんか?
メガドンキでは見つからなかったんですけど、えっ!渋谷の東急ハンズすか。
あそこって、余計な物まで買いたくなる呪縛が掛かってますよね?
一歩店内に足を踏み入れたら、たちまち無量空処の領域展開内に囚われて、あれもこれもと手に取ってしまい、気が付けば商品カートがコストコ状態になっている。
そうなってしまってからでは、五条悟を倒す事などできやしません。
いや、始めから俺に五条悟を倒す技量などありはしないのです。
てか、東急ハンズには行きませんし、そもそも蝿取り紙ではこの問題は解決しないじゃん。

だから、書いた。











逃げ場のないシングルベッドで
抱き心地の悪い女の
耳障りな呻き声を聴きながら
鈴口に当たる子宮口を目掛けて
ぶちまけなければならない刹那。
「今日は大丈夫だから」の
一言の信用度がふっと脳裏を横切るも
報酬額の高さと快楽には勝てなかった
快楽に溺れずにはいられなかったんだ







お洒落できらびやかな
デザインの手提げの中には
見るからに高級なチョコレート
誰かの結婚式にでも行くかの様な
気合いの入ったヘアースタイルを
決め込んで
今までに一度も見た事のない
清楚な感じの身なりをして
友チョコだからね」ってさ
俺はいつから親友になったのさ







「私のなにを解った積もりでいるの?」
二人の間に漂う重苦しい空気は
キスなんかじゃ
有耶無耶にできやしなかったけど
少なくとも
お前が俺を思う以上に
お前を好きだとはハッキリと言えるし
どんな喧嘩を売られようとも
真っ向から対峙する覚悟はしているよ







己れを忌み嫌っているあなたのその欠点は、何れ誰かの心に染み込んで比類無き魅力として支えになる可能性を秘めているんだよ。
欠点とは、まだ使い途の定まっていない才能として捉えれば、あなたにはまだ出会わなければならない誰かがきっと何処かであなたを待っているって信じようよ







「私は自分が嫌っている人になりたくはないのね」
枯れかけた花に語り掛ける溜め息混じりの弱音を背中越しに聞いていた
差し出すべき言葉を選ばずに口に出してしまえば、実を結ばずに朽果てる花に成り下がるのを解っていたけれど俺は、敢えて君が嫌っている自分になれる言葉を仕向けたんだ







ぼたん雪
フワリとひとひら舞い降りて
君の頬で悲しみ色のひと雫

今までの思い出や約束は
この「さよなら」の一言で
路面に溶ける雪になる

真っ直ぐな瞳とは裏腹に
言葉を失った口角が
への字に歪む







花火10分前の人混みの中で
遮られる君との距離

並んで歩けず急ぐ河川敷
差し出した右手を掴んだのは
たった一本の中指だった

片手で浴衣の胸元を抑えながら
歩きにくそうに肩を揺らし
それでいて
しっかりと握られた中指で
君の熱い期待を感じてた







昨日の自分より昨日と言う一日を経験して来た今日の自分の方が確実にスペックは上がっているはずだけど、その一日分の歳を取ってしまっている事も事実として受け止ざるを得ない
だから昨日よりも素敵な今日を生き抜けるんだと信念を持ちながら今日を生きていたいんだ







いやいや確かに君の変貌は物凄かったよ。
えっ、そんなになっちゃうんだって、やってる俺自身がちょっと引いちゃう位だったからね。
あれ程の本能剥き出しの本性を俺に晒して置いて、今更恥ずかしいはないよね。
だって、現に今でも漏らし続けてるのは気付いてないのかな?







そこに触れずに、その痛みを癒そうとするならば、ただ傍に寄り添っているだけでは役に立たない事を知っている
目の前で呆けた道化を演じて逃げ切ってしまおうか、それともザックリと傷口をこじ開けてその痛みの本質に触れようか
いずれを選んだとしてもそれなりの覚悟が必要な判断を俺は迫られている







ポケットの中で鳴り響くポップなメロディー

なんでこんな曲を選択しちまったのか後ろめたさと後悔がとうりゃんせのメロディーを掻き消して立ち竦む
奏でる16ビートが描く姿はたった数分前に「ごめんなさい」を何度も背中に浴びせ掛けるぐちゃぐちゃな泣き顔
握り締めた指先はビートを消し去った










3連休のテーマパークは人人人でごった返してた。
そんな中でのフードコートは一国一城を求める武将達の椅子取りの合戦場と化していた。
しめしめと四万米のテーブルを落とした野武士はペットボトルを旗印として掲げた後に、血だらけの家来を連れて颯爽と食糧の調達に旅立って行ったのだが、しかし。
戦略に大きな落とし穴があった事に気付いては居なかった。
我が城であるとの旗印として燦然とテーブルの中央に掲げたペットボトルは空であったのだ。
どこからともなくスーッと忍者の如きに忍び寄った清掃員が、事もあろうか、合戦の勝利を勝ち取った証しの旗印を持っていた大きなゴミ袋の中にポイと。
その途端に槍や刀、飛び交う矢の嵐。
辺り一面を血の海と化しての三国、四国のにらみ合いが勃発。
足場の悪い野山をベビーカーを先頭武器にして伸し歩く新世代家族やすばしっこい木っ端小僧を巧みに操るPTAの役員をやってそうな小うるさそうな姉さんなどなどが、子供を泣かしたり殺気みなぎる視線を飛ばしたりの総力戦を繰り広げ、勝敗を分けたのは、先に椅子に座ってしまった子供の勝利となった。
一方、食糧を調達に旅立っていた野武士達はマックのお盆やはなまるうどんを大切そうに抱えて我が城へと戻って来て見れば、小憎たらしいクソガキが鎮座している光景に、
えっ!えっ?
野武士とは言え子供を相手に段ビラをかざす分けにも行かずに、お盆を抱えてジプシーへと変貌を遂げたのであった。
野山は草原に変わり、広大なモンゴルの大地をさ迷う遊牧民のように、冷め行くうどんを抱えて人ゴミの中へと消えて行きました。



えっ、なに?

カマイタチ

「俺の心は今ここにはないから、
悔しくも悲しくも、
なんともないんだ。」

スマホを右手に持ち変えて
強がりを吐き捨てた。

「それじゃ、
これ切ったら連絡先とか
写真も全部消してよね。」

彼女の望んでる事は、
この俺の右手のスマホの中に
あるのかな?

右手の手のひら一つに
収まり切っている思い出になんかには
俺の未練などはない。

厄介なのは、
今俺の心と共に居留守を使ってる
彼女と過ごして来た年月。

振り下ろした決断と言う名の刃は、
確かに何かを傷付けたはずなのに、
今はまだ
誰の心を何れだけ切り裂いたのかが
見えずにいる。

傷口の深さを推し量れはしない
空虚な時間が過ぎた後に、
いったい何れだけの血飛沫を
上げていたのかを知るのが怖い。

俺達はこんな物だけで
繋がっていただけではない事を
彼女は解っているのだろうか。

そうか、そうだったよな。

女とは、
握り潰した恋愛沙汰を
わざわざ手のひらを開いて
眺めたりはしないんだよな。

新しい誰かのポケットの中に
ちゃっかりと手を忍ばせて、
温もりの中に捨て去れる
生き物なんだよな。



あぁ~あ、
頸動脈が切れてなければいいな。

特級呪物

ゆったりと巻かれたカシミヤのマフラーから覗く後れ毛が冷たい潮風に曝されてゆらゆらと靡いていた。
見ている俺の方が彼女の寒さを感じてしまい、ふっと、自然に出てしまった右手。
胸元の結び目の隙間を整えて、襟足のマフラーを立ち上げ、その序でに目の前にあったおでこにキスをした。
俺としては別段、取り立てて特別な事をした訳ではなかった海辺の散歩。
そんな、一時も過ぎてしまえばすっかりと忘れてしまうような些細な出来事が、
机に向かう夜半の彼女の日記には、とても思い出深いエピソードのように記される。

「ねぇ、これ、今日の日記、見てね。」

飾り気のない普通の大学ノートには、二人のその日の出来事が毎日毎日書き記され、それを検閲させられるかのように俺に手渡された。

それを読んだ後の俺の心境、感想や態度も追伸として書き残されて一日の出来事として締め括られる。

(すっと目の前に立たれて、胸元のマフラーの下に手を入れられた時に、えっ!こんな場所でおっぱいを触りたくなったのかな?って思って、ちょっと覚悟をしたけれど、あっ、なんだマフラーを直してくれただけなんだって解ったら、ちょっとガッカリ。
した次の瞬間に額に彼の唇が触れるのを感じた途端に、体がカッと熱くなってしまって、ちょっと濡れちゃったんだ。)

「えぇーっ、俺そんな事したんだっけ?
で、それで嬉ションを漏らしたの?」

(嬉ションじゃないもん、して欲しくなっただけだもん!)



カップルの同棲日記には、若気の破壊力がキラキラとちりばめられていて、神事のお焚き上げみたいな厳格な行事の時でなければ、とても葬る事などできない特級呪物を俺は今でも秘蔵してしまってる。
妖姫の念の籠った陽気な妖気が今も尚、時折俺を無量空処の領域展開の中に閉じ込めているんだ。


ジャンジャン。

未刊の小夜

多分、俺の中に脈々と眠るサディストとしての片鱗をマゾヒストの彼女は見抜いていたのかも知れない。

確かに俺はまだ低学年の頃から、幼馴染みだった彼女に対して遠慮や手加減をする事がなかったんだ。

とは言っても、喧嘩をして興奮の余りに殴る蹴る等の暴行を加えていた分けではなく、あくまでも女としての彼女の体に対しての興味本意から来る、いたずらとしてのスキンシップが一線を越えてしまった延長線上に、彼女の股間を蹴り上げたり、乳首をつねったりの加虐行為はしていたんだ。

それを彼女は、痛がっては居たものの嫌がってはいなかったし、寧ろ甘んじて受け止めていたんだ。

小学生の友達としての男女が、じゃれあって遊んでいる内にノリ過ぎてしまって歯止めが効かなくなった成り行きが、
結果的に「女の股間は蹴られても痛くないんだよ。」
と言う彼女の主張を実証すべく、自らスカートをたくし上げ、パンツを丸見せにして仁王立ちになった股間を蹴り上げている内にどんどんエスカレートして力が入って行ったんだ。

「蹴られても、何も付いてないから痛くないんだよ。」
と言いながら、蹴り上げられる度に股間を押さえながらうずくまって、
これは、「どんな場所だって蹴られれば痛いんだから当たり前じゃん。」
と言いながら、直ぐに立ち上がっては、脚を開いて次を受け止める姿勢を取ったんだ。

股間を蹴り上げているのに平気平気とばかりに立ち上がる彼女に対して苛立ちを覚え意地になっていたんだ。




小夜とは、幼稚園時代からの顔見知り?だった。

幼稚園時代には、特に一緒に遊んだりとか、話しをした覚えはなかったのだが、小学校に入学した時に、
「あっ、幼稚園の時に一緒だった子がいる。」くらいにしか思ってはいなかった。

まあ、当たり前なのだが、わずか40名くらいしかいない片田舎の単級の小学校なのだから、同じ幼稚園に通っていた園児は、みんな殆んどが同じ小学校に通うのは当然だったのだ。

小夜は余り可愛いくはなかった。
と、言うよりもブスだったんだ。

俺はと言えば、その小夜にすら似つかわしくないくらいに醜男だったのは確かだった。

各学年が一クラスしかない片田舎の小さな小学校。

教員の人数も知れたもので、低学年の内は同じ担任の教師が担当する方が生徒一人一人を把握出来ると言う事なのだろうか、ずっと同じ担任の教師だった。

なので、その担任の意向が強く反映されたのだろう。

クラス内での机の配置は、担任の偏見や大した意図もない、仲の良さそうな仲間同士が近くに集められる様な席順に配置されていたのだ。

つまり、頭の良さそうな子とか、やんちゃな子、
そして、可愛いくない子と不細工は子がなんとなく寄せ集められた席順が常だった。

定期的に席替えはなされてはいたが、俺の周りの顔ぶれは殆んどかわらなくて、絶対、必ず俺と小夜は隣同士か前後の席で、常に直ぐ側の席で六年間を過ごして来たのだ。


俺は小夜を女として意識はしていなかったんだ。

なにせ、常に近くに居る存在で、当然だが家族ではない。
兄妹的な親密さはなかったが、かと言って親友の様な友情の心情も抱いてはいなかった。

俺は、ちょこちょこと小夜に対してちょっかいを出していた。

と言っても、別に虐めと言う分けではなく、からかうと言った感じのじゃれあってる的な感覚で、それをされている小夜も、面目上は嫌がってはいたが、それに対して怒る様な事はなかったし、楽しそうにはしていたんだ。


放課後とかにも、一旦家に帰った後に一緒に遊んでいたりもしていたんだ。

無言電話

こんな夜中に鳴る独特な着メロに俺は憂鬱になった。

そう、それは、




俺は一分間躊躇った。

囁く様な「ごめんね」の後は何も聴こえて来ない無言電話。

ひたすら耳に当てているだけのスマホは彼女の「ただ、繋がっているだけで安心できるの」と言われた存在確認の為の沈黙なんだ。

二人の距離を計っているのは、呼吸音の微かな気配だけの残酷な時間が流れて行く。

これくらいしかして上げられない俺は、なんて情けないんだろうと、毎回毎回落ち込む自分が嫌なんだ。



その内に、突然、
ラインの画面が立ち上がり、
「ありがとう。」のメッセージが浮かび上がる。


暗転の画面に、俺はやっと、やるせない溜め息をぶつけるんだ。







そう、繋がるまでの一分間。
貴方が躊躇ってるのが痛いくらいに伝わってくるんだけど、コール音が貴方を呼んでいるって思うだけで気持ちが昂ってしまう。

そんな私は、つくづく女なんだなって諦められずに、その一分間にドキドキしてるんだよ。


ありがとう。


そんな気持ちすら言葉にできないほど私は貴方に依存してるんだよ。




俺は知っているんだ。

着メロが鳴る前の彼女の躊躇を。

消える画面を何度も立ち上げ直して、俺の番号とにらめっこをして、
やっとの思いで触れられた画面。

そんな意を決したコールが、着信と共に一瞬で目に浮かぶから、出来れば居留守を使いたくなってしまうんだ。

言葉もなく音もない沈黙の通話状態での二人の繋がりには、明らかな温度差が見えているんだ。

だけどそれは、敢えて言葉で伝えなければならない違和感ではなくて、
そんな時間を共有していると言う、解り合えている温かさの違いなんだ。





耳に当てたスマホの向こう側には、確かな貴方の存在が感じられているから、それまでに溜め込んだ、我慢や躊躇や勇気や本心をどんな言葉を選んで、どう話したとしても、きっとどれもこれも、正しくなんかない。

ただ、繋がってさえいれば、今、貴方は私を感じていてくれている。
その時間が何よりも尊い




厄介だな、
真夜中過ぎの朝とも言えない時間帯の静けさを、より一層に曖昧な味付けにしてしまう無言電話。

今日の終わりなのか、一日の始まりなのか、会いたいのか、会わなくてもいいのか。

「ありがとう。」の意味を深読みしなければならないなんて。

残念だよ

何も起こらなかった。
そこからは、何も始まらなかったし、
何も生まれなかった。

幾つもの夜に数百に及ぶ
DMを送り合い文字で語り合った。

最初、俺はただ彼女を励ましたかっただけだったんだ。

お互いに、得体の知れない者同士が、このnoteで他愛のない感想のメッセージを残し、twitterのDMで触れ合う様になったんだ。

ただそれだけの話しなんだ。



彼女は傷付いてた。
一つは、一般的には有りがちで、世間的にはありふれた、さほど珍しくもない事案なんだけど、
それも本人にしてみれば、人生の区切りとしては辛く苦しく大変な出来事。

勿論、助けられるなんて思ってもいなかった。
ほんの少しでも彼女と向き合って励ませられれば良かったんだ。

けれど、彼女の抱えている苦しみは、そんな簡単で単純な話しではなかった。
世間で良くある家族との別れだけには留まらずに、そこから派生した身体的にも精神的にも追い詰められた痛みを抱えていたのだった。

こんな安易な場所での文字のやり取りでは何一つ、どんな些細な痛みにさえも触れる事なんか出来やしなかったんだ。




少しでも力になって上げたい。
そんな思いを抱いてしまう俺の悪い性格。

数年前にそんな俺の、たちの悪い性格から派生してしまっている、また別の彼女、ひろみと言う存在がその時点でもまだ身近に存在していたんだ。

俺は、その時点で世間一般的に言う所の不倫と言う悪事をしていたんだ。

言わば三人目の相手になってしまうかも知れない彼女。

いくら据え膳と言えども、そんな彼女に手を出す資格なんかが、その時点での俺にある分けがなかった。

ひろみとは、もう七年にも及ぶ付き合いになっていた。

そう、もう既に他人と言う雰囲気ではなかったんだ。

別れようとは、何度も何度もして来たんだ。
その度毎に、深まってしまう関係。
過激さをます身体のやり取り。

ひろみとは、当たり前のセックスなんてものは付き合い始めのほんの数ヶ月で飽きてしまい、ひろみの性癖にズブズブと沈み込んでしまっていたんだ。

ひろみは性的支配を望んでいたのだった。

痛みに因って快楽を得る、特異体質とでも言うのだろうか。

傷付けられる事に喜びを感じ、痛みを快感として受け入れられる特殊な女性。

それが、エスカレートして行くと、、、


ひろみの身体には、幾つもの傷跡が残されている。

その一つ一つの全ては、俺に愛された証だと、誇らしげに、嬉しそうに笑顔で俺の目の前に晒している彼女の幸せそうな姿は、俺が彼女から遠ざかる事を見事に防いでいたんだ。

安易には別れられない関係にまで傷付けてしまってたんだ。

しかし、そんな危険で濃厚な肉体関係を持ち続けられていたのは、俺の仕事が地方を渡り歩く出張族だったからこそだった。

月の三分一は、国内の地方への出張で家には帰らない生活をしていたんだ。
このコロナ騒ぎになる前までは、、、

生活が激変してしまった。

当然ながら、都内のコロナ渦から地方へ出張に行くなんて仕事が成立する分けもなく、
職種の変更や配置替え、余剰人員は切り捨てられた。

俺は末端の製造工場へと左遷され、自由に動き回れる時間が無くなってしまい、
当然、ひろみとの時間もほとんど作れなくなってしまっていた。

過激な肉体関係が結べなくなってしまったんだ。



丁度良い機会だったのかも知れない。

月に一度、朝から夕方までしか逢えない関係なんて、それまでの休日を挟んだホテルでの時間を気にしないで好き勝手にやり捲っていた二人からしてみれば、なんの気晴らしにもならなかった。

会えば不満がどんどんと募るデート。

デートがしたいんじゃない!

そこは不倫関係でしかなかったんだ。




ひろみは確実に俺の彼女だった。
俺の女だったんだ。




そんな思い出だらけのひろみと別れた。


だからと言って、直ぐに新しい彼女になんて心を傾ける事なんて、
そんな器用な真似を俺が出来る分けがなかったんだ。


大分、待たせてしまったんだ。

今更、連絡を取って、どうにかなる分けもなく、

結局は、
何も起こらなかった。
そこからは、何も始まらなかったし、
何も生まれなかったんだ。




言葉が出し難くて、人と話す事が難しいと言っていたけど、
そんな事は、気を遣わなくて良い相手だったら、どうにだって出来る筈だった。
無理に話しをする必要なんてないんだし、ただ側にいて、寄り添って目を合わせてさえいれば、気持ちなんて少しは通じ合えるんだって思ってた。

際限のない性欲だって、そんな女性とは何人かと付き合って来たんだから、そんな事では驚きもしなければ戸惑いもしやしない。
求めているモノは出来るだけして上げられる様に努力をするし、満足してくれるように頑張れたのにな。


残念。
しか残らない結末だったよ。